

【朝三暮四】の由来 |
「列子」・「荘子」に書かれている、猿と老人の故事 老人が飼っている猿に与える餌の数を減らす時に、「朝3つ夜4つ」にすると猿は怒り、「朝4つ夜3つ」にすると喜んだというエピソードに由来する |
【朝三暮四】の正反対の2つの意味 | |
①うまい言葉や方法で他人をだますこと、うまく丸め込むこと ②目先の違いにとらわれ、結果が同じことに気づかないこと |
【朝三暮四】の2つの英語表現 | |
①six of one and half a dozen of another ②being preoccupied with immediate differences without realizing that there are no differences in substance |
【朝三暮四】の2つの類語・言い換え | |
朝四暮三 | 三百代言 |

【朝三暮四(ちょうさんぼし)】由来・語源は「猿と老人」の故事
由来・語源は「猿と老人」の故事
「朝三暮四(ちょうさんぼし)」は、「猿と老人」の故事に由来しています。
老人が飼っている猿に与える餌の数を減らす時に、「朝3つ夜4つ」にすると猿は怒り、「朝4つ夜3つ」にすると喜んだというエピソードです。
故事の出典は、中国戦国時代の2つの書物に由来します。
故事の出典 |
①「列子(れっし)」の「黄帝(こうてい)」 ②「荘子(そうじ・そうし)」の「斉物論(せいぶつろん)」 |
この2つの書物に書かれている故事のエピソードは、どちらも同じです。
ただ、「列子」と「荘子」では視点が異なっているので、意味も違っています。
「列子(れっし)」とは
「列子」とは、中国・戦国時代の思想家・列禦寇(れつぎょこう)の著書です。
8編から成る道家の思想書で、故事・寓言・神話が多く記されています。
別名「沖虚真経 (ちゅうきょしんけい)」と呼ばれ、道教の教典としても知られています。
「列子」は「列禦寇」の尊称でもあります。
「荘子(そうじ・そうし)」とは
「荘子(そうじ・そうし)」とは、中国・戦国時代の思想家・荘子(荘周)の著書です。
内篇・外篇・雑篇から成る思想書で、道家の思想が寓話を用いて説かれています。
著者の荘子に「南華真人」の号が贈られたことから、書物の「荘子」も「南華真経」と呼ばれるようになりました。
【朝三暮四】正反対の2つの意味とは
「朝三暮四」には、騙される側・騙す側の2つの意味があります。
その1(騙す意味・列子の視点)
「朝三暮四」の「騙す意味」は、このようになります。
うまい言葉や方法で他人をだますこと、うまく丸め込むこと |
相手が目先の利益しか見ていない場合は、うまく騙すことができるということです。
故事の出典元の「列子」では、老人の視点で「騙す側」で意味付けがされています。
その2(騙される意味・荘子の視点)
「朝三暮四」の「騙される意味」は、このようになります。
目先の違いにとらわれ、結果が同じことに気づかないこと |
目先の利益だけを考えていると、気づかないうちに騙されてしまうことがあるということです。
故事の出典元の「荘子」では、猿の視点で「騙される側」で意味付けがされています。
【朝三暮四】読み方
「朝三暮四」は、「ちょうさんぼし」と読みます。
「三」と「四」を逆にして「朝四暮三(ちょうしぼさん)」と言われることがあります。
「朝三暮四」=「朝四暮三」で、どちらも同じ意味で、正しい言葉です。
【朝三暮四】ストーリー・物語の内容
狙公(そうこう)という猿好きの老人
中国の宋の国に、狙公という猿好きの老人が住んでいました。
狙公は沢山の猿を飼い、大切に育てていました。
そして、猿と意思の疎通もできました。
貧しくなり猿たちの餌を減らす
狙公は、急に貧しくなり、猿たちの餌を減らさなければなりませんでした。
猿たちに「餌のトチの実を、朝3つ夜4つに減らす」と言うと「少なすぎる」と怒りました。
猿の反応を見て、狙公は「朝4つ夜3つにしよう」と言い直しました。
これを聞いた猿たちは、大喜びしたそうです。
まとめ
トチの実が「朝3つ夜4つ」「朝4つ夜3つ」どちらも数に変わりはありません。
朝が4つに増えたことにとらわれ、猿たちは結果が同じ事に気付かずに、喜びました。
この猿好きの老人のエピソードから、
①目先の違いにとらわれ、結果が同じことに気づかないこと。 ②うまい言葉や方法で他人をだますこと |
この2つの意味で「朝三暮四」が使われるようになりました。
【朝三暮四】漢文の白文・書き下し文・現代語訳
狙公(そうこう)という猿好きの老人
原文・白文 | 宋有狙公者 |
書き下し文 | 宋に狙公なる者有り |
現代語訳 | 宋に狙公という者がいました |
原文・白文 | 愛狙養之成群 |
書き下し文 | 狙を愛し、之を養ひて群を成す |
現代語訳 | 彼は猿を可愛がり、猿を飼い育てて群を成していました |
原文・白文 | 能解狙之意、狙亦得公之心 |
書き下し文 | 能く狙の意を解し、狙も亦公の心を得たり |
現代語訳 | 彼は猿の考えを理解し、猿もまた彼の心をわかっていました |
原文・白文 | 損其家口、充狙之欲 |
書き下し文 | 其の家口を損じて、狙の欲を充たせり |
現代語訳 | 彼は、自分の家族の食料を減らしてまで、猿の欲しがるものを与えていました |
貧しくなり猿たちの餌を減らす
原文・白文 | 俄而匱焉 |
書き下し文 | 俄にして匱し |
現代語訳 | しかし、彼は急に貧乏になってしまいました |
原文・白文 | 将限其食 |
書き下し文 | 将に其の食を限らんとす |
現代語訳 | そこで、猿の餌を減らそうとしました |
怒りだす猿たち
原文・白文 | 恐衆狙之不馴於己也、先誑之曰、 |
書き下し文 | 衆狙の己に馴れざるを恐るるや、先ず之を誑きて曰はく、 |
現代語訳 | 猿たちが自分になつかなくなることを心配し、猿たちをだましてこう言いました |
原文・白文 | 「与若芧、朝三而暮四、足乎。」 |
書き下し文 | 「若に芧を与ふるに、朝に三にして暮に四にせん、足るか。」と。 |
現代語訳 | 「お前たちにとちの実を与えるのに、朝3つ、夕方4つで足りるか?」と。 |
原文・白文 | 衆狙皆起而怒 |
書き下し文 | 衆狙皆起ちて怒る |
現代語訳 | 猿たちは、みな立ち上がって怒りだした |
喜ぶ猿たち
原文・白文 | 俄而曰、 |
書き下し文 | 俄かにして曰はく、 |
現代語訳 | そこで、次のようにすぐ言った |
原文・白文 | 「与若芧、朝四而暮三、足乎。」 |
書き下し文 | 「若に芧を与ふるに、朝に四にして暮に三にせん、足るか。」と。 |
現代語訳 | 「お前たちにとちの実を与えるのに、朝4つ、夕方3つで足りるか?」と。 |
原文・白文 | 衆狙皆伏而喜 |
書き下し文 | 衆狙皆伏して喜ぶ |
現代語訳 | 猿たちは皆、ひれ伏して喜びました |
【朝三暮四】例文
例文1 | セールだったので、つい沢山の商品を買ってしまった。余計な物まで買ってしまい、朝三暮四だった。 |
例文2 | 彼の考えた政策は、朝三暮四だ。 |
例文3 | 原材料の高騰が続いている。商品価格がは変わらないが、内容量が減っていた。朝三暮四だ。 |
例文4 | インターネットで購入している商品が送料無料になったが、商品価格が上がっていた。朝三暮四だ。 |
例文5 | 疲れているときは、朝三暮四になりがちだ。 |
【朝三暮四】英語表現
その1(six of one and half a dozen of another)
英語 | 日本語 |
dozen | ダース |
another | 別の |
英語のことわざです。
直訳すると「一方は6、他方は半ダース」
半ダースは6なので、言い方は違っても内容は同じです。
違って見えるが大差ないことを意味し、朝三暮四の英語表現として使うことができます。
その2(being preoccupied with immediate differences without realizing that there are no differences in substance)
英語 | 日本語 |
preoccupied | 夢中 |
immediate | すぐに・目先 |
difference | 違い |
realizing | 実現 |
substance | 実体・内容 |
直訳すると「内容に違いがない事に気付かず、目先の違いに夢中になる」です。
「目先の違いにとらわれ、結果が同じことに気づかない」という、騙される側の意味の英語表現となります。
【朝三暮四】類語・言い換え
その1(朝四暮三・ちょうしぼさん)
「朝四暮三」は「朝三暮四」と同じ意味です。
言い換えて使うことができます。
その2(三百代言・さんびゃくだいげん)
「三百代言」はこのような意味です。
相手を言いくるめ、人を騙すこと、騙す人 |
うまいことを言って騙すところが共通しています。