

【覆水盆に返らず】の意味 |
・一度してしまったことは、取り返しがつかないこと ・一度起きてしまったことは、二度と元には戻らない |
【覆水盆に返らず】の由来 |
中国の志怪小説集「拾遺記」・中国の歴史書「漢書」に書かれている離縁した夫婦にまつわる故事 仕事をしない夫に愛想をつかせて離縁を申し出た妻。妻は夫が出世すると復縁を求めるが、実現しなかったという故事に由来 |
【覆水盆に返らず】の6つの類語 | |||
覆水収め難し | 覆水難収 | 覆水は返らず | 覆水不返 |
【覆水盆に返らず】の6つの類語 | ||
後悔先に立たず | 後の祭り | 時すでに遅し |
取り返しがつかない | 破鏡再び照らさず | 落花枝に返らず |
【覆水盆に返らず】と同じ意味の4つのことわざ・四字熟語 | |
It is no use crying over spilt milk | What’s done is done |
What’s done cannot be undone |

ことわざ【覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)】の意味・読み方とは
【覆水盆に返らず】の意味とは
【覆水盆に返らず】とは、一度したことは取り返しがつかないという意味です。
・一度してしまったことは、取り返しがつかないこと ・一度起きてしまったことは、二度と元には戻らない |
四字熟語では「覆水不返」と書きます。
【覆水盆に返らず】の「覆水」の意味とは
「覆水」とは、このような意味です。
容器からこぼれた水 |
【覆水盆に返らず】の「盆」の意味とは
「盆」とは、このような意味です。
食器などをのせる平らな器 |
【覆水盆に返らず】の読み方とは
「覆水盆に返らず」は、「ふくすいぼんにかえらず」と読みます。
「覆水盆に帰らず」と表記されることがありますが、間違いです。
【覆水盆に返らず】の由来・語源は「拾遺記」「漢書」に書かれている故事
【覆水盆に返らず】の由来・語源は「拾遺記」「漢書」に書かれている故事
「覆水盆に返らず」の語源は、「拾遺記」・「漢書」に書かれている故事に由来しています。
「拾遺記」と「漢書」の「朱買臣伝」に書かれている、離縁した夫婦に関するエピソードです。
「拾遺記」と「漢書」の「朱買臣伝」には、同じ故事が書かれています。
由来の故事の物語の内容・あらすじ
呂尚(りょしょう)という男がいました。
呂尚は、本ばかり読んで仕事をしなかったため、妻(馬子)に離縁されてしまいます。
しばらくして呂尚が出世すると、元妻は復縁を求めてきました。
呂尚は盆から水をこぼして「その水を盆に返すことができたら、復縁しよう」と元妻に言いました。
元妻は水を戻すことができず、二人が復縁することもありませんでした。
語源は復縁を迫った妻に対する夫の言葉
盆に水を返すことができなかった馬氏に、呂尚はこのように言いました。
「こぼした水を盆に返すことはできない」 |
このことから、「一度したことは取り返しがつかないこと」を「覆水盆に返らず」と言うようになりました。
「拾遺記(しゅういき)」とは
「拾遺記(しゅういき)」とは、中国の後秦時代(4世紀頃)に文学者である王嘉(おうか)によって書かれた志怪小説集です。
伝説を集めた全10巻から成る書物で、すべて事実でないとされています。
「漢書(かんじょ)」とは
「漢書(かんじょ)」とは、中国の後漢時代(1世紀頃)に班固(はんこ)らによって編成された歴史書です。
中国王朝の正史である「二十四史」の1つで、前漢の歴史がまとめられています。
「本紀」12巻・「列伝」70巻・「表」8巻・「志」10巻の計100巻から成ります。
【覆水盆に返らず】の使い方・例文
使い方
「覆水盆に返らず」は、このようなときに使われることが多いです。
取り返しのつかないことをしてしまったときや、 取り返しのつかないことが起こったことを悔やむとき |
起こったことを嘆き悔やむときに使われます。
例文
例文1 | 親と喧嘩をして酷いことをいってしまった。覆水盆に返らずだが、後悔している。 |
例文2 | 約束の時間に遅れてしまった。覆水盆に返らずで、素直に謝るしかないだろう。 |
例文3 | 仕事でミスをして落ち込んでいたが、覆水盆に返らずだ。気持ちを切り替えて頑張るしかない。 |
例文4 | 覆水盆に返らずではあるが、判断を間違えてしまった事が悔やまれる。 |
例文5 | 大切にしていたグラスを割ってしまい、覆水盆にあらずだ。 |
【覆水盆に返らず】の同じ意味のことわざ・四字熟語
その1(覆水収め難し・ふくすいおさめがたし)
「覆水は定めて収め難し」は、「覆水盆に返らず」と意味も由来も同じです。
盆からこぼれた水は再び元の盆に戻すことはできないことから、現在の意味に転じています。
「覆水難収(ふくすいなんしゅう)」と言うこともあります。
その2(覆水は返らず・ふくすいはかえらず)
「覆水は返らず」は、「覆水盆に返らず」と意味も由来も同じです。
盆からこぼれた水は再び元の盆に戻すことはできないことから、現在の意味に転じています。
「覆水不返(ふくすいふへん)」と言うこともあります。
【覆水盆に返らず】の類語・同義語
その1(後悔先に立たず・こうかいさきにたたず)
「後悔先に立たず」とは、このような意味です。
してしまったことは、後になって悔やんでも取り返しがつかない |
例文 | 空港でパスポートを忘れたことに気づいた。後悔先に立たずだが、自宅を出るときに確認しておくべきだった。 |
その2(後の祭り・あとのまつり)
「後の祭り」とは、このような意味です。
・気がついても、いまさら取り返しがつかないこと ・手遅れ |
例文 | 後の祭りにならないように、明日のプレゼンの準備をしっかりやっておこう。 |
その3(時すでに遅し・ときすでにおそし)
「時すでに遅し」とは、このような意味です。
・今となっては打つ手がないこと ・手遅れ |
例文 | 福袋の予約をしようと思ったら、予約期間が終わっていた。時すでに遅しだ。 |
その4(取り返しがつかない・とりかえしがつかない)
「取り返しがつかない」とは、このような意味です。
元の状態に戻したり、最初からやり直すことができないこと |
例文 | 仕事で取り返しのつかないミスをしてしまった。 |
その5(破鏡再び照らさず・はきょうふたたびてらさず)
「破鏡再び照らさず」とは、このような意味です。
一度壊れてしまった関係は、元に戻すことができない |
例文 | 破鏡再び照らさずというように、今までと同じように一緒にはいられない |
その6(落花枝に返らず・らっかえだにかえらず)
「落花枝に返らず」とは、このような意味です。
・一度壊れてしまった男女の仲は、元に戻すことができないこと ・亡くなった人は生き返らないこと |
【覆水盆に返らず】の英語表現
その1(It is no use crying over spilt milk)
英語 | 日本語 |
It is no use~ing | 〜しても無駄だ |
cry | 泣く・叫ぶ |
spilt | こぼれる |
英語のことわざです。
It is no use crying over spilt milk |
こぼれたミルクを嘆いても無駄だ |
ネガティブな意味だけでなく、「ミルクはまた注げばいいので嘆くことはない」とポジティブな意味で使われることもあります。
「覆水盆に返らず」の英語表現として使うことができます。
その2(What’s done is done)
英語 | 日本語 |
What’s done | 済んでしまったこと |
done | 終わった |
What’s done is done |
済んだことは仕方がない |
もう過ぎてしまったのだから、いまさら何を言っても仕方がないというニュアンスで使われます。
「覆水盆に返らず」の英語表現として使うことができます。
その3(What’s done cannot be undone)
What’s done cannot be undone |
やってしまったことは元に戻せない |
「一度したことは取り返しがつかない」という意味で使われます。
「覆水盆に返らず」の英語表現として使うことができます。
【覆水盆に返らず】の対義語・反対語
その1(転ばぬ先の杖・ころばぬさきのつえ)
「転ばぬ先の杖」とは、このような意味です。
失敗しないように、万が一に備えて準備しておくこと |
その2(元の鞘に収まる・もとのさやにおさま)
「元の鞘に収まる」とは、このような意味です。
離縁した夫婦や、絶縁した人が元の関係に戻ること |
その3(焼けぼっくいに火がつく・やけぼっくいにひがつく)
「焼けぼっくいに火がつく」とは、このような意味です。
過去に関係のあったもの同士が、元の関係に戻ること |
【覆水盆に返らず】由来の故事/漢文の書き下し文・現代語訳
夫(太公)に離婚を申し出た妻(馬氏)
原文・白文 | 太公初娶馬氏 |
書き下し文 | 太公初め馬氏を娶る |
現代語訳 | 太公は初め、馬氏と結婚していました |
原文・白文 | 読書不事産 |
書き下し文 | 書を読みて産を事とせず |
現代語訳 | 太公は書物ばかり読んで、仕事に専念しませんでした |
原文・白文 | 馬求去 |
書き下し文 | 馬求めて去る |
現代語訳 | 馬氏は自分から願って離婚しました |
復縁を求める妻
原文・白文 | 太公封斉 |
書き下し文 | 太公斉に封せられる |
現代語訳 | 太公は後に、斉の王とされました |
原文・白文 | 馬求再合 |
書き下し文 | 馬再び合はんこと求む |
現代語訳 | 馬氏は元鞘におさまりたいと申し出ました |
夫が妻に言った言葉
原文・白文 | 太公取水一盆傾于地、令婦収水 |
書き下し文 | 太公水一盆をとり地に傾け、婦をして水を収め令む |
現代語訳 | すると太公は水の入った盆を持ち出して地に流し、馬氏に水を元に戻させました |
原文・白文 | 憔得期其 |
書き下し文 | 憔だ其の泥を得たるのみ |
現代語訳 | 馬氏はただ泥をすくうだけしかできませんでした |
原文・白文 | 太公曰、「若能離更合、覆水定難収」 |
書き下し文 | 太公曰く「若能く離れて更に合はんとするも、覆水は定めて収め難しと」 |
現代語訳 | そこで太公は「おまえがひとたび離婚し、復縁しようとしても、こぼれた水は地にしみこんで、元に戻らないようなものだよ」と言いました |