

【呉越同舟】の由来・語源 |
「孫子(そんし)」の第十一篇「九地(きゅうち)」に書かれている、呉国人と越国人に関する故事 敵国同士で争い続けていた呉国人と越国人ですら、一緒に乗った船が突風で転覆しそうになれば協力するというたとえ話に由来する |
【呉越同舟】の意味 |
・仲の悪いもの同士や敵と味方などが、共通の目的のために協力したり助け合ったりすること ・仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること |
【呉越同舟】の3つの同じ意味のことわざ・四字熟語 |
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同舟相救う | 同舟共済 | 楚越同舟 |
【呉越同舟】の3つの類語・類義語 |
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共同戦線 | 大同団結 | 一致団結 |
【呉越同舟】の由来・語源は「孫子」に書かれている中国の故事
由来・語源は「孫子(そんし)」に書かれている中国の故事
「呉越同舟」は、中国春秋時代の書物「孫子」に書かれている故事に由来しています。
「孫子」の第十一篇「九地(きゅうち)」に書かれている、呉国人と越国人のたとえ話です。
春秋時代、呉国と越国は争いを繰り返し、両国の争いは、38年にも及びました。
宿敵同士だった両国は、国民同士の仲も険悪だったようです。
「孫子」とは
「孫子」とは、中国春秋時代に、軍事思想家・孫武によって書かれた兵法書です。
計・作戦・謀攻・形・勢・虚実・軍争・九変・行軍・地形・九地・火攻・用間の1巻13編から成ります。
日本にも大きな影響を与えた書物で、新井白石・吉田松陰らによる注釈書が存在します。
「呉越同舟」の由来の故事が書かれている「九地」には、9種類の地勢についての説明と、それに応じた戦術がまとめられています。
「兵法書(へいほうしょ)」とは
兵法書とは、戦争などでの兵の用い方をまとめた書物のことです。
著名な兵法書には「孫子」の他、「呉子」「六韜」などがあります。
「孫武(そんぶ)」とは
孫武は、中国春秋時代の軍事思想家です。
孫武の「戦わずして勝つ」という考えは、中国の革命家・毛沢東や現在の軍事研究者にも影響を与えています。
「孫子」は、孫武の尊称でもあります。
【呉越同舟】の意味をわかりやすく解説
【呉越同舟】の意味とは
【呉越同舟】とは、このような意味です。
・仲の悪いもの同士や敵と味方などが、共通の目的のために協力したり助け合ったりすること ・仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること |
「呉」の意味とは
「呉」とは、このような意味です。
春秋時代の諸国の一つ 越とは敵対関係にあり、争いを繰り返していた |
「越」の意味とは
「越」とは、このような意味です。
春秋時代の諸国の一つ 呉とは敵対関係にあり、争いを繰り返していた |
「同舟」の意味とは
「同舟」とは、このような意味です。
同じ船に乗り合わせること、乗り合わせた人 |
【呉越同舟】の読み方
「呉越同舟」は「ごえつどうしゅう」と読みます。
「ごえつどうせん」と読まれることがありますが、間違いです。
また、漢字表記で「呉越同船」と書かれることがありますが、これも間違いです。
【呉越同舟】の故事の内容
「孫子」には、このように書かれています。
春秋時代、呉国と越国は仲が悪く、争いを繰り返していた 仲の悪い呉・越の人でも、同じ船に乗り合わせた時に突風で船が転覆しそうになれば、お互い助け合うだろう |
このたとえ話から、仲の悪いものや敵同士でも、共通の目的のために協力したり助け合ったりすることを「呉越同舟」と言うようになりました。
【呉越同舟】漢文の現代語訳・書き下し文・白文
伝説上の「常山の蛇」
原文・白文 | 善用兵者、譬如率然 |
書き下し文 | よく兵を用うる者は、譬えば率然のごとし |
現代語訳 | 兵士をうまく統率する者は、例えると率然のようなものである |
原文・白文 | 率然者、常山之蛇也 |
書き下し文 | 率然は常山の蛇なり |
現代語訳 | 率然とは、常山にいる蛇のことである |
原文・白文 | 撃其首則尾至、撃其尾、則首至、 |
書き下し文 | 其の首を撃てば則ち尾至り、其の尾を撃てば則ち首至り、 |
現代語訳 | この蛇の首を撃てば尾が助けに来て、尾を撃てば、首が助けに来る |
原文・白文 | 撃其中、則首尾倶至 |
書き下し文 | 其の中を撃てば則ち首尾倶に至る |
現代語訳 | 胴体を撃てば、首と尾が同時に攻撃してくる |
孫子への問い
原文・白文 | 敢問、「兵可使如率然乎」 |
書き下し文 | 敢えて問う、兵は率然の如くならしむべきかと |
現代語訳 | あえて聞こう、「軍隊を率然のようにさせることができるのか」と |
孫子の答え
原文・白文 | 曰、「可。夫呉人与越人相悪也 |
書き下し文 | 曰く、「可なりと。夫れ呉人と越人との相悪むや |
現代語訳 | 孫子は言った、「できる。そもそも、呉の人と越の人とはお互いに憎み合っているが |
原文・白文 | 當其同舟而濟、遇風、 |
書き下し文 | 其の舟を同じくして済るに当たりて、風に遇はば |
現代語訳 | 同じ船に乗り合わせた時に突風が吹けば |
原文・白文 | 其相救也、如左右手」 |
書き下し文 | 其の相救うや左右の手のごとし |
現代語訳 | お互いに助け合うのは、左右の手のようなものだ」と |
【呉越同舟】の使い方・例文
「呉越同舟」は、敵対関係にある者同士が、協力する時に使われることが多いです。
例文1 | 問題を解決するために、呉越同舟をする必要がある |
例文2 | あの仲の悪い二人が協力するなんて、呉越同舟だ |
例文3 | 呉越同舟で、会社の危機を乗り越えなければならない |
例文4 | 業界大手のA社とB社が、呉越同舟でプロジェクトに取り組んでいる |
例文5 | ライバルである1課と2課が、呉越同舟でプロジェクトに取り組むことがベストだ |
【呉越同舟】と由来・語源が同じことわざ・四字熟語
その1(同舟相救う)
「呉越同舟」と由来が同じことわざに「同舟相救う」があります。
読み方は「どうしゅうあいすくう」
どちらも同じ故事が由来となっていて、意味も同じです。
例文 | 同舟相救うで、会社の危機となれば、ライバル会社と提携することも必要だ |
その2(同舟共済・どうしゅうきょうさい)
「呉越同舟」と由来が同じ四字熟語に「同舟共済」があります。
読み方は「どうしゅうきょうさい」
どちらも同じ故事が由来となっていて、意味も同じです。
例文 | 同舟共済で、年末の忙しさを乗り越えなければならない |
その3(楚越同舟・そえつどうしゅう)
「呉越同舟」と由来が同じ四字熟語に「楚越同舟」があります。
読み方は「そえつどうしゅう」
どちらも同じ故事が由来となっていて、意味も同じです。
例文 | 楚越同舟というように、今は協力して問題を解決しよう |
【呉越同舟】の類語・類義語
その1(共同戦線・きょうどうせんせん)
「共同戦線」とは、このような意味です。
2つ以上の団体が、共通の目的のために協力すること |
会社や国などの異なる組織が協力する時に使われます。
目的のために協力するところが、共通しています。
その2(大同団結・だいどうだんけつ)
「大同団結」とは、このような意味です。
多くの団体が、共通の目的のために一致団結すること |
目的のために協力するところが、共通しています。
その3(一致団結・いっちだんけつ)
「一致団結」とは、このような意味です。
大勢の人が、目的を達成するために協力し合うこと |
目的のために協力するところが、共通しています。
【呉越同舟】の英語表現
その1(bitter enemies in the same boat)
直訳すると「同じ舟に乗っている宿敵」となります。
「bitter enemies」で「宿敵」
「in the same boat」で「同じ境遇・同じ立場」という意味です。
「呉越同舟」の英語表現として使うことができます。
その2(strange bedfellows)
「strange」は「不思議な・変な」
「bedfellows」は「寝所を共にする人・協力者・仲間」という意味です。
「strange bedfellows」で「奇妙な仲間」となり、「呉越同舟」の英語表現として使うことができます。
その3(We’re in the same boat)
直訳すると「私たちは同じ舟に乗っている」となります。
「呉越同舟」の英語表現として使うことができます。
その4(Woes unite foes)
直訳すると「災いは敵同士を団結させる」となります。
英語 | 日本語 |
woe | 苦痛・災難な出来事 |
unite | 団結する・合う |
foe | 敵・かたき |
「呉越同舟」の英語表現として使うことができます。
その5(while the thunder lasted, two bad men were friends)
直訳すると「雷が鳴っている間、二人の悪人たちは友人だった」となります。
英語 | 日本語 |
thunder | 雷 |
last | 物事が続く、継続する |
「呉越同舟」の英語表現として使うことができます。
【呉越同舟】の対義語・反対語(船頭多くして船山に上る)
「船頭多くして船山に上る」とは、このような意味です。
指示をだす人が多いため、統一がとれず、物事が目的とは違った方向に進んでしまうこと |
「協力すればいいというものではない」という意味があり、反対の意味と言えます。
【呉越同舟】の中国語
「呉越同舟」を中国語にすると、このようになります。
吴越同舟 |