
【漁夫の利】の意味 |
当事者同士が争っている隙に、第三者が何の苦労もなく利益を横取りすること |
【漁夫の利】の語源・由来 |
「戦国策」の「燕策」に書かれている、ハマグリとシギの故事。 ハマグリとシギが争いに夢中になっている間に、両者とも漁夫に捕獲されてしまった故事に由来する。 |
【漁夫の利】の5つの類語・類義語 |
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犬兎の争い | 濡れ手で粟 | 棚からぼたもち |
田父の功 | 鷸蚌の争い |
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故事成語【漁夫の利】意味とは
【漁夫の利】意味とは
【漁夫の利】とは、このような意味です。
当事者同士が争っている隙に、第三者が何の苦労もなく利益を横取りすること |
【漁夫】意味とは
「漁夫」とは、このような意味です。
漁業をする人、漁師 |
【漁夫の利】読み方とは
「漁夫の利」は「ぎょふのり」と読みます。
「の→之」で「漁夫之利」
「夫→父」で「漁父の利」と書かれる事がありますが、どちらも正しいです。
【漁夫の利】の由来・語源は「戦国策」に書かれている故事
由来・語源は「戦国策」に書かれている中国の故事
「漁夫の利」は、戦国時代の史書「戦国策」に書かれている故事に由来しています。
「戦国策」の「燕策」に書かれている、ハマグリとシギのエピソードです。
「戦国策」とは
「戦国策」とは、戦国時代の遊説士の策略などを、国別にまとめた33編から成る書物です。
元々「国策」「国事」「事語」「短長」「長書」「脩書」と呼ばれていた書物がありました。
これらを、前漢の時代に、学者・政治家である劉向(りゅうきょう)が一つにまとめました。
【漁夫の利】白文・書き下し文・現代語訳
趙の国が燕の国を攻撃しようとしている時のエピソードです。
燕の蘇代と趙の恵文王
「蘇代(そだい)」とは、中国戦国時代の縦横家のことです。
原文・白文 | 趙且伐燕 |
書き下し文 | 趙且に燕を伐たんとす |
現代語訳 | 趙は燕を攻めようとしていました。 |
原文・白文 | 蘇代、爲燕謂惠王曰 |
書き下し文 | 蘇代、燕の為に惠王に謂ひて曰はく |
現代語訳 | 蘇代が燕の為に、(趙の王である)惠王に言うことには、 |
シギとハマグリ
「鷸(シギ)」とは、水辺に住む渡り鳥のことです。
原文・白文 | 今者臣來過易水 |
書き下し文 | 今者臣来たりて易水を過ぐ |
現代語訳 | いま私がこちらに来るときに易水を通り過ぎました |
原文・白文 | 蚌正出曝 |
書き下し文 | 蚌方に出でて曝す |
現代語訳 | ハマグリがちょうど水面に出て日にあたっていました |
原文・白文 | 而鷸啄其肉 |
書き下し文 | 而して鷸其の肉を啄ばむ |
現代語訳 | そして鷸がその貝の肉をついばもうとしました |
原文・白文 | 蚌合而箝其喙 |
書き下し文 | 蚌合して其の喙を箝む |
現代語訳 | ハマグリは貝殻を合わせて鳥のくちばしを挟んでしまいました |
シギの言葉
原文・白文 | 鷸曰、 |
書き下し文 | 鷸曰く、 |
現代語訳 | 鷸は言った、 |
原文・白文 | 「今日不雨、明日不雨、即有死蚌」 |
書き下し文 | 「今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん」と |
現代語訳 | 「今日も雨が降らず、明日も雨が降らなければ、すぐに干からびて死んだハマグリができあがるだろう」と |
ハマグリの言葉
原文・白文 | 蚌亦謂鷸曰、 |
書き下し文 | 蚌も亦鷸に謂ひて曰はく、 |
現代語訳 | ハマグリもまた鷸に向かって言った、 |
原文・白文 | 「今日不出、明日不出、即有死鷸」 |
書き下し文 | 「今日出でず、明日出でずんば、即ち死鷸有らん」と |
現代語訳 | 「今日くちばしが貝殻から出ず、明日も出なければ、すぐに死んだ鷸ができあがるだろう」と |
シギとハマグリの結末
原文・白文 | 両者、不肯相舎 |
書き下し文 | 両者、相舎つるを肯ぜず |
現代語訳 | 両者とも、互いを放すことを承諾しませんでした |
原文・白文 | 漁者得而并擒之 |
書き下し文 | 漁者得て之を并せ擒ふ |
現代語訳 | 漁師がこれの両方を一緒に捕らえてしまいました。 |
燕の蘇代が趙の恵文王を説得
原文・白文 | 今趙且伐燕 |
書き下し文 | 今趙且に燕を伐たんとす |
現代語訳 | 趙は、今にも燕に攻めようとしています |
原文・白文 | 燕趙久相支、以敝大衆、 |
書き下し文 | 燕と趙久しく相支へ、以つて大衆を敝れしめば、 |
現代語訳 | 燕と趙が長い間戦いに持ちこたえ、そのために両国の国民を疲弊させたならば、 |
原文・白文 | 臣恐強秦之爲漁父也 |
書き下し文 | 臣強秦の漁父と為らんことを恐るるなり |
現代語訳 | 強国の秦が漁師のようになることを恐れています |
原文・白文 | 故願王之熟計之也 |
書き下し文 | 故に王の之を熟計せんことを願ふなり |
現代語訳 | そのために王が燕に攻め入ることをよくお考えになることを願うのです |
考えを変えた趙の恵文王
原文・白文 | 惠王曰「善」 |
書き下し文 | 惠王曰わく「善し」と |
現代語訳 | 恵王が言った、「わかった」と |
原文・白文 | 乃止 |
書き下し文 | 乃ち止む |
現代語訳 | そこで(燕に攻め込むことを)やめた |
まとめ
シギとハマグリは争いをしていたため、漁師に簡単に捕らえられてしまいました。
これを例え、燕の蘇代は「趙と燕が争えば、秦が漁夫の利を得るだろう」と趙の王を説得しました。
このエピソードから、第三者が得をする意味で「漁夫の利」が使われるようになりました。
【漁夫の利】の使い方・例文とは
その1(第三者が得をするとき)
当事者同士が争っている間に、第三者が利益を得る場合に使われます。
例文1 | 自己中心的な考え方をすると、漁夫の利のような事態になってしまう |
例文2 | 同期の二人が闘争している間に課長に昇進できたのは、まさに漁夫の利だ |
例文3 | 趙は今にも燕を攻めようとしていました。 |
その2(漁夫の利を得る)
「漁夫の利」の第三者が利益を得るの意味から、「漁夫の利を得る」と使われる事があります。
例文1 | 二人が争っている間に、自分が漁夫の利を得る事ができた |
例文2 | 常に周りの様子に気を配っていれば、漁夫の利を得るチャンスはあるものだ |
その3(漁夫の利を占める)
利益を得たことを強調したいときに、「漁夫の利を占める」と使われる事があります。
例文1 | まさか彼が漁夫の利を占めるとは、想定外の出来事だ |
例文2 | 漁夫の利を占めたのは、堅実な仕事をする彼女だった |
【漁夫の利】の類語・類義語
その1(犬兎の争い・けんとのあらそい)
「犬兎の争い」はこのような意味です。
両者が争ってともに弱ったところで、第三者に利益を横取りされること |
「漁夫の利」同様、「戦国策」に出てくる故事が由来となっています。
犬がウサギを追いかけ回し、両者が力尽きて倒れたところで、簡単に農夫に捕まってしまった。
第三者が利益を得るところが、「漁夫の利」と共通しています。
その2(濡れ手で粟・ぬれてであわ)
「濡れ手で粟」はこのような意味です。
苦労をせずに、簡単に利益を得ること |
濡れた手で粟を掴むと、手に粟が付き沢山掴むことができます。
苦労をせずに利益を得るところが、「漁夫の利」と共通しています。
その3(棚からぼたもち)
「棚からぼたもち」はこのような意味です。
苦労せずに、思いがけない幸運を得ること |
「棚ぼた」と略して使われることがあります。
苦労をせずに幸運を得るところが、「漁夫の利」と共通しています。
その4(田父の功・でんぷのこう)
「田父の功」はこのような意味です。
争っているもの同士が両方とも倒れて、第三者が利益を得ること |
「漁夫の利」同様、「戦国策」に出てくる故事が由来となっています。
犬がウサギを追いかけ回し、両者が力尽きて倒れたところで、簡単に農夫に捕まってしまった。
「田父」は農夫のことです。
第三者が利益を得るところが、「漁夫の利」と共通しています。
その5(鷸蚌の争い・いつぼうのあらそい)
「鷸蚌の争い」はこのような意味です。
両者が争っている間に、第三者が苦労せずに利益を横取りすること |
「漁夫の利」同様、「戦国策」に出てくる「シギとハマグリ」の故事が由来となっています。
【漁夫の利】の英語表現
その1(Two dogs fight for a bone, and the third runs away with it)
英語のことわざで、「漁夫の利」と同じ意味があります。
直訳すると「2匹の犬が1本の骨を争っている間に、3匹目の犬が骨を持って行ってしまう」です。
その2(fish in troubled waters)
直訳すると「問題の水の中の魚」ですが、慣用表現で以下のような意味で使われます。
・どさくさに紛れてうまいことする ・混乱状態を利用して、利益を横取りする |
その3(profiting while others fight)
「profit」は「利益を得る」という意味です。
「他者が争っている間に利益を得る」という意味になり、「漁夫の利」の意味で使うことができます。
【漁夫の利】の中国語とは
「漁夫の利」を中国語で表記すると、以下のようになります。
・鹬蚌相争 ・渔人得利 |
【漁夫の利】の対義語とは
その1(二兎追うものは一兎をも得ず・にとをおうものはいっとをもえず)
「二兎追うものは一兎をも得ず」はこのような意味です。
欲を出して同時に二つのものを得ようとしても、結局どちらも失敗してしまう |
欲を出すと失敗してしまうところが「漁夫の利」と反対の意味と言えます。
その2(虻蜂取らず・あぶはちとらず)
「虻蜂取らず」はこのような意味です。
二つのものを同時に取ろうとして、結局両方とも得られないこと |
「二兎追うものは一兎をも得ず」同様、欲を出すと失敗してしまうところが「漁夫の利」と反対の意味と言えます。