
- ❶由来・語源
- ❷意味・読み方
- ❸使い方・例文
- ❹6つの英語表現
- ❺8つの類語
【乾坤一擲(けんこんいってき)】の由来・語源 |
中国の漢詩「鴻溝を過ぐ」にまつわる故事 紀元前203年の漢国と楚国の戦いで、漢国が和睦の約束を破り、楚国を攻撃するという大勝負にでたことを「一擲乾坤」という言葉で表現したことに由来。「一擲」とは一度にすべてを投げ捨てること、「乾坤」とは天と地という意味です。 |
【乾坤一擲】の意味 |
運命をかけて、一か八かの大勝負をすること |
【乾坤一擲】の読み方 |
けんこんいってき |
【乾坤一擲】の6つの英語表現 | |
stake everything one has | all or nothing |
sink or swim | take the chance |
do-or-die | stake all |
【乾坤一擲】の8つの類語 | |||
賽は投げられた | 当たって砕けろ | 伸るか反るか | 一六勝負 |
大一番 | 一発勝負 | 天王山 | ルビコン川を渡る |

故事成語【乾坤一擲(けんこんいってき)】の由来・語源

【乾坤一擲】の由来・語源
- ❶由来は中国の漢詩「鴻溝を過ぐ」
- ❷漢国軍が大勝負をかけたエピソードとは
- ❸漢詩「鴻溝を過ぐ」の原文・書き下し文・現代語訳
- ❹「鴻溝(こうこう)」とは
由来は中国の漢詩「鴻溝を過ぐ」
「乾坤一擲」の由来は、中国唐代の詩人・韓愈(かんゆ)の「鴻溝を過ぐ(こうこうをすぐ)」という漢詩です。
「鴻溝を過ぐ」は、紀元前203年の漢楚の戦いで、漢国軍が大勝負をかけたエピソードを謳った詩です。
戦いのあった約1000年後の紀元後800年に、韓愈が当時のことを思い詩にしたものです。
「鴻溝を過ぐ」 |
龍疲れ虎困しみて川原を割く 億万の蒼生 性命存す 誰か君王に勧めて馬首を回さしむ 真成に一擲乾坤を賭す |
漢国軍が大勝負をかけたエピソードとは
漢国の皇帝(劉邦)と楚国の皇帝(項羽)は協力して秦王朝を倒した後、二人で天下を争いますが決着がつかず、鴻溝を境にそれぞれの国を治める取り決めをしました。
国名 | 皇帝名 | |
鴻溝の西側 | 漢国 | 劉邦(りゅうほう) |
鴻溝の東側 | 楚国 | 項羽(こうう) |
この取り決めで多くの国民の命が救われるはずだったのですが、大勝負にでたのが漢国の劉邦。
項羽を倒すチャンスは今しかないという家臣(張良・陳平)の助言を聞き、取り決めを破り楚国を攻撃し、勝利をおさめました。
韓愈は、この劉邦の大勝負を「一擲乾坤」という言葉で表現しました。
「鴻溝を過ぐ」の原文・書き下し文・現代語訳
原文・白文 | 龍疲虎困割川原 |
書き下し文 | 龍疲れ虎困(くる)しみて川原(せんげん)を割(さ)く |
現代語訳 | 疲れた龍(項羽)と虎(劉邦)は川原を境に(天下を二分)した |
原文・白文 | 億萬蒼生性命存 |
書き下し文 | 億万の蒼生(そうせい)性命(せいめい)存す |
現代語訳 | 億万の人民の生命は保たれるはずだった |
原文・白文 | 誰勸君王回馬首 |
書き下し文 | 誰か君王に勧(すす)めて馬首を回(かえ)さしむ |
現代語訳 | 誰が君王に馬を引返させ、(項羽を追撃することを勧め) |
原文・白文 | 真成一擲賭乾坤 |
書き下し文 | 真成(しんせい)に一擲(いってき)乾坤(けんこん)を賭(と)す |
現代語訳 | 乾坤一擲を成したのか |
「鴻溝(こうこう)」とは
「鴻溝」は、現在の中国にある賈魯河のことです。
賈魯河は、河南省開封の西方を流れている河です。
【乾坤一擲】の意味と読み方

【乾坤一擲】の意味と読み方
- ❶【乾坤一擲】の意味
- ❷「乾坤」の意味
- ❸「一擲」の意味
- ❹「乾坤一擲」の読み方
【乾坤一擲】の意味とは
「乾坤一擲」とは、運命をかけて大勝負をすることです。
「乾坤一擲」の意味 |
運命をかけて、一か八かの大勝負をすること |
「乾坤」の意味
「乾坤」の意味は次のようになります。
「乾坤」の意味 |
・天と地 ・陰と陽 ・サイコロの奇数の目と偶数の目 ・一か八か(いちかばちか) |
「一擲」の意味
「一擲」の意味は次のようになります。
「一擲」の意味 |
・思い切って一度に全てを投げ捨てること ・サイコロを一回だけ投げて勝負にでること |
「乾坤一擲」の読み方
「乾坤一擲」の読み方は、「けんこんいってき」です。
「一擲乾坤」と書かれることもありますが、どちらも間違いではありません。
一般的には「乾坤一擲」が使われます。
漢字の見た目が人名に見えるので、「いぬいしんいちろう」と読まれてしまうことがあります。
【乾坤一擲】の使い方

「乾坤一擲」は、大勝負をしようとするときに使われます。
ただの勝負ではなく、自分の運命をかけて覚悟を持って臨むような、大勝負です。
【乾坤一擲】の例文

【乾坤一擲】の例文
- ❶乾坤一擲の大勝負の例文
- ❷乾坤一擲の戦いの例文
- ❸乾坤一擲の一撃の例文
- ❹その他の例文
その1(乾坤一擲の大勝負)
よく使われる言い回しに「乾坤一擲の大勝負」があります。
「乾坤一擲」に「大勝負」という意味が含まれているので、厳密にいうと意味が重複しています。
例文1 | 世界記録保持者と、今期の最高記録保持者の戦いは、一擲乾坤の大勝負となるだろう。 |
例文2 | 決勝戦は、一擲乾坤の大勝負となったが、残念ながら負けてしまった。 |
その2(乾坤一擲の戦い)
「乾坤一擲の戦い」も、比較的よく使われる言い回しです。
例文 | 社運を賭けた、乾坤一擲の戦いに挑んだ。 |
その3(乾坤一擲の一撃)
「乾坤一擲の一撃」も、比較的よく使われる言い回しです。
例文 | 乾坤一擲の一撃をかわされてしまった。 |
その3(乾坤一擲を賭す)
「乾坤一擲を賭す」も、比較的よく使われる言い回しです。
例文 | 今後どうなるかわからないが、乾坤一擲を賭すことにした。 |
その4(その他の使い方)
例文1 | 両親に留学を反対されたが、乾坤一擲の覚悟で説得し許しを得ることができた。 |
例文2 | 乾坤一擲の思いで勉強し、医者になることができた。 |
例文3 | 厳しい状況ではあるが、乾坤一擲の大企画を行うことになった。 |
例文4 | 乾坤一擲のコンテストで優勝することができた。 |
【乾坤一擲】の英語表現

【乾坤一擲】の英語表現
stake everything one has | all or nothing |
sink or swim | take the chance |
do-or-die | stake all |
その1(stake everything one has)
「stake everything one has〜」で「すべてを賭ける」という意味です。
運命をかけた大勝負という意味で、「乾坤一擲」の英語表現として使うことができます。
英語 | 日本語 |
stake | 賭ける |
everything | すべての |
They will stake everything he has on the new project. |
彼らは新プロジェクトに乾坤一擲の勝負をかけるだろう。 |
その2(all or nothing)
「all or nothing」は直訳すると「全部かゼロか」となります。
一か八かの大勝負という意味で、「乾坤一擲」の英語表現として使うことができます。
切羽詰まった、追い込まれた場面で使われることが多いです。
It is all or nothing. |
それは乾坤一擲の大勝負だ。 |
その3(sink or swim)
「sink or swim」で「伸るか反るか、一か八か」という意味です。
一か八かの大勝負という意味で、「乾坤一擲」の英語表現として使うことができます。
I will give it a try, sink or swim. |
一か八かやってみよう。 |
その4(take the chance)
「take the chance」は「一か八か」という意味です。
一か八かの大勝負という意味で、「乾坤一擲」の英語表現として使うことができます。
Let’s take a chance. |
一か八かやってみよう。 |
その5(do or die)
「do-or-die」は「必死の覚悟の、命がけの、生きるか死ぬかの」という意味です。
運命をかけた大勝負という意味で、「乾坤一擲」の英語表現として使うことができます。
「all or nothing」同様、追いつめられた場面で使われることが多いです。
It’s do-or-die. |
それは乾坤一擲だ。 |
その6(stake all)
「stake all」は「すべてを賭ける」という意味です。
運命をかけた大勝負という意味で、「乾坤一擲」の英語表現として使うことができます。
Their are staking all for it. |
彼らは乾坤一擲の勝負をする。 |
【乾坤一擲】の類語

【乾坤一擲】の類語
賽は投げられた | 当たって砕けろ | 伸るか反るか | 一六勝負 |
大一番 | 一発勝負 | 天王山 | ルビコン川を渡る |
その1(賽は投げられた・さいはなげられた)
「賽は投げられた」とは、このような意味です。
「賽は投げられた」の意味 |
進み始めた物事は、最後までやり抜くしかない |
覚悟を持って行動するというニュアンスで使われます。
例文 | 新事業の資金が集まった、ついに賽は投げられた。 |
その2(当たって砕けろ・あたってくだけろ)
「当たって砕けろ」とは、このような意味です。
「当たって砕けろ」の意味 |
成功するかわからなくても、思い切って行動すること |
覚悟を持って行動するというニュアンスで使われます。
例文 | 自信はないが、当たって砕けろの精神で、生徒会長に立候補することにした。 |
その3(伸るか反るか・のるかそるか)
「伸るか反るか」とは、このような意味です。
「伸るか反るか」の意味 |
成功するか失敗するかわからないが、運を天にまかせて思い切って物事を行うこと |
覚悟を持って行動するというニュアンスで使われます。
例文 | どうなるかわからないが、伸るか反るかの大勝負にでてみよう。 |
その4(一六勝負(いちろくしょうぶ)
「一六勝負」とは、このような意味です。
「一六勝負」の意味 |
・サイコロの目に一が出るか六が出るかで勝負を決めること(ばくち) ・運を天にまかせて、冒険的な物事をすること |
例文 | 一六勝負で大金を手にすることになった。 |
その5(大一番・おおいちばん)
「大一番」とは、このような意味です。
「大一番」の意味 |
・相撲などで、優勝を左右するような大事な取組や試合のこと ・重要な出来事 |
例文 | 明日の大一番を前に、入念な最終調整が行われた。 |
その6(一発勝負・いっぱつしょうぶ)
「一発勝負」とは、このような意味です。
「一発勝負」の意味 |
・一回で決着をつけること ・一回で勝負を決めること |
例文 | 審査は本番一発勝負だ。 |
その7(天王山・てんのうざん)
「天王山」とは、運命の分かれ目という意味です。
「天王山」の意味 |
運命や勝負の分かれ目 |
例文 | 明日の試合が、今大会の天王山だろう。 |
その8(ルビコン川を渡る・ルビコンがわをわたる)
「ルビコン川を渡る」とは、運命の分かれ目という意味です。
「ルビコン川を渡る」の意味 |
・重大な決断や行動をすること ・後戻りのできない道へと進む決断をすること |
例文 | 彼女の決意は固く、ルビコン川を渡る覚悟をしているようだ。 |