
【敵に塩を送る】の由来・語源 |
戦国時代、越後国(新潟県)の武将・上杉謙信は、甲斐国(山梨県)の武将・武田信玄が塩不足で困っていることを知り、敵対関係だったにもかかわらず、塩を送り、武田信玄を助けたことに由来。 |
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【敵に塩を送る】の意味 |
敵の弱みにつけこまないで、逆にその苦境から救うこと |

【敵に塩を送る】3つの類語 | ||
相手を利する | 呉越同舟 | ハンディキャップを与える |

【敵に塩を送る】3つの反対語 | ||
傷口に塩を塗る | 不意打ち | 敵の弱みにつけ込む |

【敵に塩を送る】3つの英語表現 |
show humanity even to one’s enemy |
make a gesture of respect to the enemy |
help an enemy in difficulty |


【敵に塩を送る】由来・語源の上杉謙信・武田信玄の逸話とは
由来・語源
- ❶由来・語源は上杉謙信が塩を送った逸話
- ❷塩不足になった理由とは
- ❸上杉謙信が塩を送った理由とは
- ❹「塩留めの太刀(しおどめのたち)」とは

由来・語源は上杉謙信が塩を送った逸話
【敵に塩を送る】は、上杉謙信が武田信玄に塩を送った逸話に由来します。
戦国時代(1569年・永禄11年)、越後国(新潟県)の武将・上杉謙信は、塩不足に苦しむ甲斐国(山梨県)の武将・武田信玄に、塩を送りました。
当時、両者は敵対関係でしたが、上杉謙信は「塩を送り」、困っていた武田信玄を救いました。
このことから、「敵の弱みにつけこまないで、逆にその苦境から救う」意味で「敵に塩を送る」が使われるようになりました。
塩不足になった理由とは
戦国時代、武田信玄は駿河国(静岡県)・相模国(神奈川県)と同盟を結び、塩や海産物などを輸入していました。
甲斐国(山梨県)は海に面していないため、塩は他国から購入するしかありません。
ところが、東海地方への進出を狙っていた信玄は、同盟を破棄してしまいます。
これをきっかけに、駿河国・相模国は甲斐国への塩の販売を禁止。
甲斐国は深刻な塩不足に陥り、国民の生活は困窮し、健康被害が出るほどだったそうです。
上杉謙信が塩を送った理由とは
上杉謙信が、ライバルである武田信玄に塩を送り助けた理由は、ビジネスです。
上杉謙信は、武田信玄が塩不足で困っていることを知ると、次のような手紙を送ります。
争う所は弓箭に在りて、米塩に在らず (我々の争いは、武力の争いであって、米や塩の争いではない) |
この手紙をきっかけに、越後国の塩は甲斐国で販売されるようになります。
越後国は塩を「無償で送った」わけではなく、「適正な価格で販売」したのです。
独占販売で越後国は大きな利益を得るとともに、武田信玄から感謝さることになります。
感謝の印として、武田信玄から上杉謙信に「塩留めの太刀」が贈られました。
「塩留めの太刀(しおどめのたち)」とは
「塩留めの太刀」は、塩のお礼に武田信玄から上杉謙信に贈られた太刀です。
銘は「弘」
鎌倉時代に作られた「備前一文字派」の作品で、重要文化財に指定されています。
現在は、東京国立博物館に所蔵されています。
【敵に塩を送る】の意味

【敵に塩を送る】とは、敵の弱みにつけこまないで、逆にその苦境から救うことです。
【敵に塩を送る】の意味 |
敵の弱みにつけこまないで、逆にその苦境から救うこと |
【敵に塩を送る】の使い方・例文
使い方・例文
- ❶使い方
- ❷例文

使い方




現在は、「苦しんでいる相手を救うようなことはしないほうがいい」という意味で、「敵に塩を送ることにならないか」という使い方をすることが多いです。
例文
例文1 | 我が社が確保している原材料をA社に提供しよう。敵に塩を送ることになるが、今は業界全体で踏ん張る時だ。 |
例文2 | 送られた塩を無駄にしないよう、必ず結果を残す。 |
例文3 | 彼とは真剣な勝負をしたいと思っていたので、敵に塩を送った。 |
【敵に塩を送る】3つの類語
英語表現
傷口に塩を塗る | 不意打ち | 敵の弱みにつけ込む |

その1(相手を利する・あいてをりする)
「相手を利する」とは、相手に利益を与えることです。
「相手を利する」の意味 |
敵や相手に利益を与えること |
例文 | 大事なプレゼン前に社内で揉めるのは、相手を利することになるだけだ。 |
その2(呉越同舟・ごえつどうしゅう)
「呉越同舟」とは、敵対している者同士が協力したりすることです。
「呉越同舟」の意味 |
・仲の悪いもの同士や敵と味方などが、共通の目的のために協力したり助け合ったりすること ・仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること |
例文 | 問題を解決するために、呉越同舟をする必要がある。 |
よろしければお読み下さい。
【呉越同舟】由来と故事の現代語訳・書き下し文/意味・使い方・例文も解説 |

その3(ハンディキャップを与える)
「ハンディキャップを与える」とは、弱者に有利な条件を与えることです。
「ハンディキャップを与える」の意味 |
勝負などで技量差のバランスを取るために、弱者に有利な条件を与えること |
【敵に塩を送る】3つの反対語
反対語
傷口に塩を塗る | 不意打ち | 敵の弱みにつけ込む |

その1(傷口に塩を塗る・きずぐちにしおをぬる)
「傷口に塩を塗る」とは、悪いことの上にさらに悪いことが重なるという意味です。
「傷口に塩を塗る」の意味 |
悪いことの上にさらに悪いことが重なること |
その2(不意打ち・ふいうち)
「不意打ち」とは、予告なしに物事を行うことです。
「不意打ち」の意味 |
予告なしに物事を行うこと |
その3(敵の弱みにつけ込む)
「敵の弱みにつけ込む」とは、相手の弱みを捉えて利用することです。
「敵の弱みにつけ込む」の意味 |
相手の弱みを捉えて利用すること |
【敵に塩を送る】3つの英語表現
英語表現
show humanity even to one’s enemy |
make a gesture of respect to the enemy |
help an enemy in difficulty |

その1(show humanity even to one’s enemy)
「show humanity even to one’s enemy」を直訳すると「敵に人間性を示す」です。
「敵に塩を送る」の英語表現として使うことができます。
英語 | 日本語 |
show humanity | 人間性を示す |
enemy | 敵 |
その2(make a gesture of respect to the enemy)
「make a gesture of respect to the enemy」を直訳すると「敵に敬意を示す」です。
「敵に塩を送る」の英語表現として使うことができます。
英語 | 日本語 |
make a gesture | 身振りをする |
respect | 尊敬する |
enemy | 敵 |
その3(help an enemy in difficulty)
「help an enemy in difficulty」を直訳すると「困難な敵を助ける」です。
「敵に塩を送る」の英語表現として使うことができます。
英語 | 日本語 |
help an enemy | 敵を助ける |
difficulty | 困難 |
塩の日
1月11日は、塩の日に制定されています。
上杉謙信から送られた塩が、武田信玄の領地であった松本藩領(長野県松本市)に到着したのが、1569年1月11日でした。
このことを記念して「塩の日」が制定されました。
松本市では、毎年1月に「松本あめ市」というお祭りが開催され、上杉軍・武田軍に分かれて綱引きを行う「塩取合戦」が行われているそうです。