
【窮鼠猫を噛む】の由来 |
中国の経済政策の書物「塩鉄論(えんてつろん)」に書かれている故事に由来 |
【窮鼠猫を噛む】の意味 |
・絶体絶命の危機に追い詰められたネズミは、必死で猫に噛みつくことがある ・弱い者でも、追い詰められれば、強者に反撃することがある |

【窮鼠猫を噛む(きょうそねこをかむ)】の由来・語源とは
由来は「塩鉄論(えんてつろん)」に書かれている故事
「窮鼠猫を噛む」は、中国の漢の時代に書かれた、経済政策の書物「塩鉄論・詔聖(しょうせい)」に由来しています。
「塩鉄論」の「詔聖」に書かれている、「専売制」にまつわるエピソードです。
中国・前漢時代は財政が悪化していた為、国は専売制を行っていました。
この政策で財政は持ち直しますが、国は儒学者や商人から批判を受けることになります。
語源は有識者の言葉に由来している
儒学者や商人は、次のように国を批判しました。
「庶民や家臣を追い詰めてはいけない」と。
この批判によって、ある一人の有識者は、庶民や家臣をネズミに例え、国をネコに例えて次のように言いました。
書き下し文 | 死して再びは生きざれば、窮鼠も狸を噛み |
現代語訳 | 死んでしまっては、生き返ることはないのだから、追い詰められたネズミはネコにも噛み付くでしょう |
「狸」とは、中国では「野生の猫」を意味していました。
中国の経済政策の書物「塩鉄論」とは
「塩鉄論」とは、中国・前漢時代に桓寛(かんかん)によって編成された経済政策書です。
全10巻・60編の編成で、「専売制」についての会議の議事録をまとめたものです。
当時の社会状況や経済・政治などの実情を知ることができる、貴重な文献とされています。
【窮鼠猫を噛む】の由来となった故事の物語のあらすじ・内容
前漢時代は財政が悪化していたため、「専売制」が行われていました。
批判を受けた政策「専売制」
前漢の時代は財政が悪化していた為、財政家の桑弘羊(そうくよう)らの提案で、国は塩・鉄・酒などの専売制を行っていました。
・国が物資を買い占めて、価格が高騰したタイミングで販売する ・国が安く買った物資を、価格が高騰している地域で販売する |
このような政策で漢の財政は持ち直したのですが、「国家が民間と利益を争うことは卑しいこと」と桑弘羊は儒学者や商人から批判を受けます。
「塩鉄会議」の開催
儒学者や商人からの批判を受けて開催されたのが、政府と民間による話し合いの場である「塩鉄会議」です。
民間から60名の有識者が集められ、財政問題だけでなく、外交・内政・教育についての論議もされたようです。
「塩鉄会議」での有識者の言葉
「塩鉄会議」で有識者はこのように発言し、政府の説得を試みました。
死して再びは生きざれば、窮鼠も狸を噛み、 |
死んでしまっては、生き返ることはないのだから、追い詰められたネズミはネコにも噛み付くでしょう |
匹夫万乗を奔り、舍人弓を折る |
同じように、庶民は天子から逃げ、家臣は弓を折り戦いをやめるでしょう |
陳勝呉広は是なり |
陳勝・呉広の敗北はまさにこの例である |
まとめ
専売制については有識者側の意見が優勢だったものの、代案がなかったため廃止には至らず。
再び財政悪化の危機に陥ったこともあり、お酒以外の専売制は継続されました。
国民や家臣を追い詰めたら何をするかわからないので、政府が国民を苦しめるようなことをしてはいけない。
この故事から「弱い者でも、追い詰められれば、強者に反撃することがある」ことを「窮鼠猫を噛む」と言うようになりました。
【窮鼠猫を噛む】の意味・読み方とは
【窮鼠猫を噛む】の意味
「窮鼠猫を噛む」とは、このような意味を持つことわざです。
・絶体絶命の危機に追い詰められたネズミは、必死で猫に噛みつくことがある ・弱い者でも、追い詰められれば、強者に反撃することがある |
「窮鼠」の意味
「窮鼠」とは、このような意味です。
追い詰められて逃げ場を失ったネズミ |
読み方
「窮鼠猫を噛む」は、「きゅうそねこをかむ」と読みます。
【窮鼠猫を噛む】の2つの教え・教訓とは
「窮鼠猫を噛む」には、このような2つの教えがあります。
①弱い者を侮ってはいけない |
②逃げ場のないところに人を追い詰めてはいけない |
【猫vs熊】窮猫熊を噛む・・・
ガラス越しですが、猫が熊に反撃している、おもしろ動画です!
まさに窮鼠猫を噛むで、弱者でも、追い詰められれば、強者に反撃することがあるのです。
3つある!【窮鼠猫を噛む】の使い方・例文
「窮鼠猫を噛む」には3つの使い方があります。
使い方・例文 その1(弱い者を侮ってはいけない)
強者は弱者を侮り、油断しがちです。
強者でも、弱者に侮り隙を与えてしまうと、反撃されてしまいます。
・窮鼠猫を噛むにならないように、イベントが終わるまで気を引き締めなければならない |
使い方・例文 その2(逃げ場のないところに人を追い詰めてはいけない)
弱者は、追い詰められれば強者に反撃します。
このことから、「反撃されるほど人を追い詰めてはいけない」と言う使い方ができます
・窮鼠猫を噛むと言うように、理不尽なことがあれば控えめな人でも言い返してくるだろう ・これ以上糾弾すると、窮鼠猫を噛むになってしまうかもしれない |
使い方・例文 その3(追い込まれると想像以上の能力を発揮する)
追い込まれると想像以上の能力を発揮するは、ネズミの視点に立った使い方です。
・彼女は窮鼠猫を噛むタイプだから、逆境の時ほど力を発揮するだろう |
【窮鼠猫を噛む】の英語表現
英語表現 その1(A baited cat may grow as fierce as a lion)
「A baited cat may grow as fierce as a lion」は、直訳すると「いじめられた猫はライオンのように獰猛になる」となります。
英語 | 日本語 |
baited 〇〇 | いじめられた〇〇 |
grow | 成長・育つ |
fierce | 激しい |
この猫は、英語では犬に追い詰められた猫を意味します。
「窮鼠猫を噛む」と同じような意味になります。
英語表現 その2(Despair makes cowards courageous)
「Despair makes cowards courageous」を直訳すると「絶望は臆病者を勇気づける」
英語 | 日本語 |
despair | 絶望 |
cowards | 臆病者 |
courageous | 勇気のある |
この表現は、「窮鼠猫を噛む」の弱者であるネズミの視点に立った表現です。
【窮鼠猫を噛む】の類義語・類語
類義語・類語 その1(窮寇は追うことなかれ・きゅうこうはおうことなかれ)
「窮寇は追うことなかれ」は、このような意味の言葉です。
窮地に追い込まれた敵を攻撃し続けると、思わぬ損害を受ける。必要以上に追いつめてはいけない。 |
「窮寇」とは、「追い詰められて逃げ場を失った敵」と言う意味です。
追い詰めすぎると害を受けると言う点で、似たような意味があります。
類義語・類語 その2(火事場の馬鹿力・かじばのばかぢから)
「火事場の馬鹿力」は、このような意味の言葉です。
切迫した状況に追い込まれると、普段では想像もできないような力を無意識に発揮すること |
「窮鼠猫を噛む」のネズミの視点に立った使い方をする時と似た意味になります。
類義語・類語 その3(背水の陣・はいすいのじん)
「背水の陣」は、このような意味の言葉です。
逃げ場がない状況で、決死の覚悟を持って取り組むこと |
「窮鼠猫を噛む」のネズミの視点に立った使い方をする時と似た意味になります。
【窮鼠猫を噛む】と似た意味の四字熟語
四字熟語 その1(禽困覆車・きんこんふくしゃ)
「禽困覆車」は、このような意味の言葉です。
力の弱い者でも追い詰められれば、とてつもない力を発揮すること |
「禽困」とは「追い詰められた小鳥」、「覆車」とは「車をひっくり返すこと」を意味します。
四字熟語 その2(窮鼠噛猫・きゅうそごうびょう)
「窮鼠噛猫」は、このような意味の言葉です。
・絶体絶命の危機に追い詰められたネズミは、必死で猫に噛みつくことがある ・弱い者でも、追い詰められれば、強者に反撃することがある |
「窮鼠噛猫」と「窮鼠猫を噛む」は同じ意味・語源を持つ言葉です。
「窮鼠返って猫を噛む(きゅうそかえってねこをかむ)」とは
「窮鼠猫を噛む」は「窮鼠かえって猫を噛む」と言われることがあります。
「窮鼠猫を噛む」が多く使われますが、どちらも意味は同じです。